成長と共に
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
息子と妻のやり取りを新聞越しに見る。
「成長したなぁ」 と思う。
この春から中学生。
幼稚園に通い始めた頃、玄関先で寝転び、
行きたくないと駄々をこねてたあいつが。
03年の冬、中山競馬場、新馬戦のパドック。
1頭の若駒が周回するうち座り込んでしまった。
「うちの坊主みたいだ」
隣の妻と笑う。
「あの子、走りたくないのよ、きっと」
「でも、走らなきゃ、やつの将来はないぞ」
「そうよね、けど、嫌なら別にいいんじゃない?」
女は甘いな。そう思って、オッズを見る。
1番人気。
来るはずないと、消した。
結果、2着。
「よく、がんばったわね」
妻は静かに頷いていた。
翌年の皐月賞。
あの時の馬がトライアルで権利を取り、出走していた。
パドックを見る。
座り込んで駄々をこねてたあいつが威風堂々歩いている。
「成長したでしょ?」
妻がはしゃぐ。
「だけど、10番人気だぜ」
「いいのよ、あの子、がんばったからこの舞台にいられるの。私は応援
する」
僕は来るわけない、と消した。
やがて新緑の中、18頭がきれいなスタート。
逃げるメイショウボーラーを追うのがその馬だった。
ダイワメジャー。
必死に食らいつき先頭を伺う。
最終コーナーを周ったところで抜け出す。
妻が叫ぶ。
「ほら、がんばれ!がんばれ!」
僕のわき腹をバンバン叩きながら。
大外から猛然と追い上げる1番人気のコスモバルク。
そして1馬身差で歓喜のゴールだった。
息子を送り出したあと、妻がテーブルに付く。
「成長したわね、あの子。ダイワメジャーみたいに立派になれるかしら」
コーヒーをすすりながら彼女はつぶやく。
「そりゃ、あいつ次第だろ?皐月賞、見に行くか?久しぶりに」
「いいわね、今年もそんな季節かぁ。ところで私たちって成長してるのか
しら?」
「さぁ?、あいつに聞いてみるか」
人の成長と共にあるのが競馬なのだ。
G1 皐月賞
4月24日(日) 東京競馬場 芝2000m
一宮 寿司 すし券 でら吟 歓送迎会 出前 弁当 法事 慶事 宴会 会席 個室 接待 ランチ 結納