巨星、落つ
昨日の大量の寂し見舞い、実は楽山、いや前身の「さかえ鮨」からの常連客のYさんが亡くなられました。

享年83歳
さかえ鮨から楽山まで45年間通っていただきました。
Yさんは楽山の中では通称は大将。Yさんはうちの大将の事は
「おとっつぁん」
と呼んでみえました。
ですから今日のブログの大将とはYさんの事をさしますので間違えないでください(笑)
大将はさかえ鮨、開店2日目にご来店されたそうです。
当時、ここ一宮は繊維産業が隆盛の頃、撚糸業を営んでいた大将は毎晩ほとんど飲み歩いていた感じだったそうです。家から歩いてすぐに開店した「さかえ鮨」遊び人にとって近所に寿司屋ができのは好都合だったんでしょう。週に2日は来店していました。
ボクが生まれたのはさかえ鮨開店から2年後。その日もカウンターでお連れさんと飲んでたそうです。実はボク、難産だったそうで病院からおばあちゃんが親父に電話したそうです。ところがカウンターに常連の大将がいる、病院に行こうが動けません。そわそわする親父をみて大将、気づいたんでしょうね。
「おとっつぁん、どうした?なんかあったんか?」
「あ、赤ん坊が難産みたいで。病院から電話が」
「馬鹿野郎!すぐ病院に行け!店は俺が見とったる!早よ、行け!」
こうして、ボクが生まれた時もこの店で飲んでいました(笑)
だから子供の頃から本当によく可愛がっていただきました。
思春期の頃はよく言い合いもしましてね。生意気なボクに説教するんですよね。で、言い返す(笑)
本当にマセタガキでした(笑)
岐阜の料理屋に修行に行ったのも大将の仲間が常連だったからです。親父を連れて行ったりしてね。うちの親父がいつか倅が料理の世界に行きたいと言ったらこういう店で勉強させたいと思ったそうです。
それで今でもこの世界に身を投じてるわけです。
修行先の店にも来てくれましたよ。
「もっちゃん、頑張れよ!」
あ、ボク、昔からのお客さんには「もっちゃん」って呼ばれてます。ちょっと古い人は「もりちゃん」(笑)若大将と呼んでくれるのは最近のお客様ですね。大将って呼んでくれる人もいますがまだボクは若大将です(笑)
さかえ鮨から楽山に改装中も時々顔を出しては
「楽しみやなぁ」
と言ってみえて、楽山開店初日。
「どうや?お客、おるか?」
実は開店当日、静かでねぇ(笑)
「そうか、ホンなら賑わしに行くわ!」
と、カウンター全席キープ(笑)
粋なお客様でした。
みえる時は開店5時から(笑)
「もっちゃん、一杯、飲みゃあ!」
と、飲まされます(笑)2杯、3杯(笑)
もう、ヘロヘロ(笑)
ご自分では飲むだけでつまみは少しだけ。親父とボクには酒を振る舞い、飲めないお袋には
「おかぁちゃん、これ食べやぁ!」
って料理を食べさす(笑)
帰りには家族に土産です(笑)
「もっちゃん、勘定してくれ。安くしとけよ!」
(笑)これ定番。
帰る時はボクに握手して
「もっちゃん、頑張れよ!」
これもいつものパターンでした。
うちの親父も大将からは商売のいろんな事を教えてもらったそうです。
いろんな語録があったなぁ。
「もっちゃん、儲けろよ、ほんでもあんまり儲けすぎるなよ、ムカつくで(笑)」
「現金は生きていく上でのパスポート」
「俺も昔は少しはもてた。顔やないぞ、銭をちょっと持っとるでや(笑)」
思い出したらキリがありません。
酒が好き、女が好き、博打が好き(笑)
お客様の接待も上手でした。
下請けの人たちに振る舞う人はあんまり見たことがありません。でも、下請けあってはじめて仕事が成り立つという信念があったのでしょうね。
本当に粋な人でした。
「さかえ鮨の定休日は電気が点いとらんでさみしい」
とか嬉しいことも言っていただきました。
晩年はカウンターで飲むのをやめましてね。さかえ鮨から楽山で一緒に飲んでた常連の方と夫婦二組で座敷にみえてました。
「80になるオジイがカウンターで大きい顔して飲んどったらいかん」
だそうです。
身の引き方も潔かった。
ボクがお客になる時、1番目指して来たのは大将の飲み方かもしれません。
本当にたくさんの事を教えてもらいました。
昨日の通夜。家族親戚以外で1番泣いていたのはボクかもしれません(笑)
そのぐらいさみしいです。
いや、親父もお袋もでしょう。
「おかぁちゃん、俺が死んだらおかぁちゃんも参りに来てくれよ」
口癖でした。
大したもんです。ちゃんと定休日に合わせて逝くんですから。
本当はボクも告別式に行きたかった。ボクが生まれたときに飲んでてくれたんです。最後、送りたかった。
末期の水は水ではなく愛飲していた「白雪」
大将らしいです(笑)
来店する度
「どうや、もっちゃん、儲かっとるか?」
芳しくないと言うと
「俺が生きとるうちは店閉めるなよ!」
よく言われました。
大将、なんとか持ちました(笑)
今日は長いブログになってしまいました。
思い出は尽きません。
大将、本当にありがとうございました!
感謝の気持ちでいっぱいです。
棺に大将の好物を入れさせていただきました。

楽山のえびしんじょうと鮎の塩焼き、焼き松茸です。
あの世で一杯やってください。
うちの親父がそっち行ったら、また可愛がってやってください。
もう、あの声は聞けません。
合掌。